清くて正しい社内恋愛のすすめ
 すると店の一番奥の角のコーナーが目に止まった。

 白地の麻布の上に、サンゴや巻き貝などど一緒にディスプレイされているのは、バッグチャームのようだ。


 ゴールドの留め具の先にはヒトデやサンゴ、パールの小さなモチーフと、貝の形をした透明で少し大きなモチーフがついている。

 そっと持ち上げてみると、貝のモチーフの中には白い砂浜の砂と共に、小さなサンゴや貝が入っていた。


「綺麗……」

 穂乃莉は思わず声を出し、チャームを目の前に掲げる。

 窓から差し込む光を受けるように、それはキラキラと反射して光って見えた。

 思わず時を忘れてチャームに見入っていた穂乃莉は、加賀見のスマートフォンの音ではっと我に返る。


「会社からだ……ちょっと、出てくる」

 加賀見は小声でそう言うと、駆け足で店の外へと出て行った。

 出張中にかかってくるということは、仕事で何かあったのだろうか。

 心配そうに入り口に目を向けていた穂乃莉は、ぽんぽんと誰かに肩を叩かれて、驚いて振り返った。
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