清くて正しい社内恋愛のすすめ
「さっきの綺麗なお姉さんにゃん」

 決して広くない店内で、通路を塞ぐように立っていたのは“びわにゃん”だ。


「お姉さんに、良いこと教えてあげるにゃん」

「良いこと?」

「そのチャームは“ね(がい)を叶える幸せのチャーム”にゃん」

 “びわにゃん”はそう言うと、穂乃莉の手元のチャームを指さす。


「願い?」

「そうにゃん。中に入っているピンクの貝は“さくら貝”にゃん。幸せの貝殻と言い伝えられていて“永遠の愛を誓う”という意味もあるにゃん」

「さくら貝……」

 穂乃莉はもう一度チャームを目の前にかざす。

 チャームの中では、淡いピンク色のやや台形型の貝が、花びらの様に儚くも、でも凛として佇んでいるのが見えた。


「恋人へのプレゼントとして大人気にゃん」

「そうなの?」

「だから……買って買って~にゃん」

 “びわにゃん”は手をバタバタさせて飛び跳ねようとして、棚にぶつかり慌ててそれをやめる。

 そして他のお客さんに声をかけながら、また外へと出て行ってしまった。
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