清くて正しい社内恋愛のすすめ
 やはり加賀見の隣はとても居心地がいい。

 穂乃莉は、一番星が輝き出した空に溶け込むような、加賀見の綺麗な横顔を見上げた。


「それにしても、もったいなかったなぁ」

 すると加賀見は「あーあ」と声を上げながら大きく伸びをして、頭の上で手を組んだ。

「え? なにが?」

 穂乃莉は加賀見が何を言おうとしているのかわからず、小さく首を傾げる。

 加賀見は見上げた穂乃莉の耳元に、そっと唇を寄せた。


「せっかく穂乃莉との、デート気分を味わえると思ったのにって」

 耳元でささやく声を聞いた途端、穂乃莉の顔は真っ赤になる。

 穂乃莉が心の中で思っていたことを、こんなにもサラッと言われてしまったら、恥ずかしすぎてどうしたら良いのかわからなくなるじゃないか。


「も、もう! やめてよ。これから仕事なのに……」

 穂乃莉は真っ赤な顔を隠すように、わざと頬を膨らませると、加賀見の顔を睨みつけた。

 加賀見はそんな穂乃莉の顔を嬉しそうに見つめながら、そっと穂乃莉の左手を取る。
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