清くて正しい社内恋愛のすすめ
 穂乃莉は加賀見と再度説明の手順を確認すると、失礼のないようにと、スマートフォンの電源を切っておいた。

 それからしばらくして、支配人が満足そうな笑みを浮かべながら部屋にやってきた。


「この度は、貴重なお時間を頂きまして、誠にありがとうございます」

 穂乃莉は加賀見と共に立ち上がると、丁寧に頭を下げながら支配人と名刺を交換する。

 支配人はやはり満足そうな顔つきで、穂乃莉の名刺を受取った。


 加賀見との事前の話し合いで、今回の支配人への説明は穂乃莉がメインで行うことになっている。

 ディナーへの招待の際も、支配人が穂乃莉に向けて話をしていたということもあり、その方が良いと加賀見が判断したのだ。

 加賀見ほどうまく説明できるか不安はあったが、「お前ならできるよ」という加賀見の言葉は、本当に“御守り“のように穂乃莉の自信になった。


 それぞれが再び席につくと、スタッフがワインを注ぎにやってきた。

「今までも何度か足を運んで下さっていたようですな。大変失礼なことをしました」

 支配人は穂乃莉に向かって大らかそうに笑うと、テーブルに置かれたワインを勧める。
< 113 / 445 >

この作品をシェア

pagetop