清くて正しい社内恋愛のすすめ
 確か“東雲リゾートホテル“の上層階は客室のみだったはずだ。

 不思議そうな顔をした穂乃莉に、支配人が「はっはっはっ」と豪快な笑い声をたてた。


「客室の一室を、レイアウト変更して、私の執務室にしているのですよ。私自身が、元々はこのホテルのファンだったものでしてね」

 支配人の説明に、穂乃莉は目を丸くした後、納得したようにうなずく。

「原田様は、ご自身のホテルに対する想いがお強いんですね。今日お話しを伺っていても、それを感じました」

「いやいや、貴方のような方に褒められると、年甲斐もなく照れますなぁ」

 支配人は満足そうにそう言うと、再び豪快な笑い声を立てた。


 しばらくして、ポンという音と共にエレベーターの扉が開く。

 すると目の前に、豪華な作りの大きな両開きの扉が現れた。

 穂乃莉は軽く辺りを確認する。

 最上階はどうもこの一室しか部屋が用意されていない。


 ――ここってスイートルーム……?


 穂乃莉は出張の前に何度も確認した、客室の配置図を思い出す。
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