清くて正しい社内恋愛のすすめ

違和感の正体

「……はい、はい。それでは残りの日程も、素敵な旅をお楽しみください。失礼いたします」

 加賀見はスマートフォンの画面をタップすると、ほっと息をつきソファの背もたれにドサッと寄りかかる。

 予想以上に時間を要したが、お客様は何とか納得してくれ、無事にトラブルは回避できた。


 加賀見はノートパソコンのキーをタッチすると、やり取りの詳細の報告を上げる。

 完了のエンターキーを押したところで、卓から着信が入った。


「加賀見さーん。今、こっちにも現地から報告が届きました。本っ当にありがとうございました!」

「いや、旅行を楽しみにしてたお客様の気持ちもわかるからさ。でも、最終的には納得してもらえてよかったよ」

「やっぱり加賀見さんですね。さすがだって、向こうでも……」

 卓の声はそこまで聞こえた後、ぱたりと途切れる。


「卓? どうした?」

 卓は誰かに呼ばれて受話器を離したのか、何度か呼びかけたが応答はなかった。

 加賀見は不思議に思い、スマートフォンのスピーカーに耳をぐっと押し当てる。

 どうも相田が大きな声で、卓に向かって何か言っているようだ。
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