清くて正しい社内恋愛のすすめ
 穂乃莉が小さく頬を膨らませた時、デスクトップの視界の端に、社内専用チャットルームの着信を告げる表示が映る。

 このチャットルームは、社長が社員同士の円滑なコミュニケーションのために導入したもので、入室した社員同士が気軽にメッセージのやり取りができるツールだ。


 穂乃莉は首を傾げながらチャットルームをクリックし、飛び込んで来た名前を見た途端、ドキッと目を泳がせた。

 入室しているのは、目の前で涼しい顔をしている加賀見だ。

 穂乃莉はしばらく躊躇(ためら)ったのち、恐る恐る“入室”の文字をクリックする。


『お前、動揺しすぎだろ』

 しばらくして、今にもケラケラと笑い出しそうなメッセージが表示された。

 いやいや。今、この人にそんな事を言われたくない。


『誰のせいだと!?』

 穂乃莉は顔をしかめると、手早く文字をうつ。

『俺のせい? 俺はお前の夢を叶えてやるって言っただけだけど』

『夢って何よ? だいたい、なんで加賀見に叶えてもらわなきゃいけないの!?』
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