清くて正しい社内恋愛のすすめ
「吉村さんは、知ってたんですか? 支配人の噂……」
加賀見はしんと静まり返ったエレベーターの中で、隣の吉村を睨みつけるように下から見上げた。
吉村は放心したように足元を見つめていたが、深く息をつくと静かに目を閉じる。
「実は一度、ホテル内で大事になったことがありました。でも支配人は問題をもみ消すように、内々に処理したので公にはなっていません。当然この事は、東雲の本社も知らない……」
「そんな事が許されるんですか!?」
食いつくように見つめる加賀見に、吉村は首をうなだれる。
「それぐらい、このホテルでの支配人の力が強いんです。でもその事件以降、支配人も落ち着いていましたし、今日は加賀見さんが一緒だから大丈夫だと……」
加賀見は吉村には返事をせず、今度は拳を自分の足に叩きつけた。
顔を上げるとエレベーターのランプは、ゆっくりと上へ点滅を続けている。
叫び出したい気持ちを堪えながらランプを睨みつけていた加賀見は、最上階で点滅が止まったのと同時にフロアに駆けだした。
目の前には大きな両開きの扉が見える。
加賀見はその前まで行くと、力いっぱい扉を叩いた。
後ろから駆け付けた吉村は、呼び出しのベルを何度も押す。
加賀見はしんと静まり返ったエレベーターの中で、隣の吉村を睨みつけるように下から見上げた。
吉村は放心したように足元を見つめていたが、深く息をつくと静かに目を閉じる。
「実は一度、ホテル内で大事になったことがありました。でも支配人は問題をもみ消すように、内々に処理したので公にはなっていません。当然この事は、東雲の本社も知らない……」
「そんな事が許されるんですか!?」
食いつくように見つめる加賀見に、吉村は首をうなだれる。
「それぐらい、このホテルでの支配人の力が強いんです。でもその事件以降、支配人も落ち着いていましたし、今日は加賀見さんが一緒だから大丈夫だと……」
加賀見は吉村には返事をせず、今度は拳を自分の足に叩きつけた。
顔を上げるとエレベーターのランプは、ゆっくりと上へ点滅を続けている。
叫び出したい気持ちを堪えながらランプを睨みつけていた加賀見は、最上階で点滅が止まったのと同時にフロアに駆けだした。
目の前には大きな両開きの扉が見える。
加賀見はその前まで行くと、力いっぱい扉を叩いた。
後ろから駆け付けた吉村は、呼び出しのベルを何度も押す。