清くて正しい社内恋愛のすすめ
 頭をなでるようにゆっくりと触れると、加賀見の顔が小さくほころんだ気がする。


 昨夜、加賀見はひどく自分のことを責めていた。

 加賀見は何も言わなかったが、それは痛いほどに穂乃莉にも伝わってきた。

 あの出来事は、決して加賀見のせいで起こったことではない。

 むしろ穂乃莉自身の未熟さと焦りが、引き金になったとさえ思っているのだ。

 だから加賀見が責任を感じる必要は全くない。

 それでも加賀見は、ずっと自分を責めていた。

 そして自分を責めた結果、加賀見はもう二度と穂乃莉に触れなくなるのではないかという不安が、穂乃莉をのみ込んだ。


 だから穂乃莉は、恐る恐る加賀見に確認したのだ。

 “魔法”と言ってキスをせがみ、まだ自分と恋愛してくれるのか、と加賀見に聞いた。


 ――でも、きっと大丈夫だ。


 穂乃莉は再び加賀見の寝顔を覗き込む。

 加賀見は穂乃莉の不安に気がついて、ちゃんとそれを取り除いてくれた。

 たとえ期限つきの恋愛だったとしても、まだ加賀見は自分の隣にいてくれる。

 そんな自信を穂乃莉に与えてくれた。
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