清くて正しい社内恋愛のすすめ
「やっぱり、(かな)わないなぁ」

 穂乃莉は小さくつぶやくと、加賀見の唇にそっと触れる。

 加賀見のキスは、本当に魔法のようだ。

 もっともっととねだってしまう……。

 昨夜のキスを思い出して熱くなった身体を隠すように、穂乃莉は思わず両手で顔を覆うと見悶える。


「なに? もっと“魔法”が欲しいわけ?」

 すると突然、加賀見の声が目の前で聞こえた。

 穂乃莉がドキリとして顔を上げると、目の前に口元を引き上げる加賀見の顔があった。


「お、起きてたの!?」

 穂乃莉は一人で照れていた自分が、急激に恥ずかしくなってくる。

「まあね」

 加賀見はにんまりと顔をほころばせると、「いてて」とつぶやきながら、肩や首に手を当てて、コキコキと回した。

 ベッドにうつ伏せという、変な態勢で寝ていたのだから無理もない。


「身体なまってるな」

 そう言いながらふてくされたような顔をする加賀見に、穂乃莉は恥ずかしさも忘れて、思わずぷっと吹き出した。

 穂乃莉の笑い声を聞いた加賀見は、少しほっとしたような顔をすると、穂乃莉の頬に手を当てる。
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