清くて正しい社内恋愛のすすめ
「私は、もう平気だって言ったでしょ? だから加賀見は、もう自分のこと責めないで」

「……穂乃莉」

「加賀見は何も悪くないの。私が軽卒だっただけ……」

「そんなこと言ったら、お前だって何も悪くないだろ?」

「でも……とにかく加賀見は責任感じないで! わかった?」

「あぁ」

「本当にわかってる?」

「まぁ、ほどほどには」

「ほどほどって!」

 穂乃莉が「もう」と頬を膨らませると、加賀見が下から顔を覗き込ませてくる。


「やっぱり、俺にも必要かも」

「何が……?」

「何にも考えられなくなる“魔法”」

「え……?」

「穂乃莉にかけて欲しいなぁ」

 加賀見はわざとらしく顔を背けると、横目でチラッと穂乃莉を見ている。


 その顔つきを見て、穂乃莉はドキッとする。

 これは完全に腹黒王子の顔つきだ。


「も、もう! いじわるなんだから!」

 穂乃莉は頬を赤くするとそっぽを向く。

 そんな穂乃莉の顎先を、加賀見が指先でくいっと自分の方に向けた。


「わ、わかったから……」

 穂乃莉は耐え切れずにそう言うと、身を乗り出して加賀見にチュッとキスをした。
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