清くて正しい社内恋愛のすすめ
 前に加賀見は“清い社内恋愛”と言っていた。

 でも契約恋愛とはいえ、恋愛中なのだからそういうことが起こってもおかしくはないはず。

 穂乃莉だって、どこかで期待はしていたし、心の準備だってできていた。


 上昇する心拍数に合わせるかのように、お互いの息づかいもさらに荒くなる。

 激しく求めるように唇を重ね、熱を帯びた加賀見の唇が、穂乃莉の首筋から胸元に触れた時……。


 加賀見のスマートフォンが鳴った。

 その音を聞いた途端、二人の動きはぴたりと止まる。

 着信音は、今までのムードなどそっちのけで、無機質な音を止めることなく響かせる。


「か、加賀見。電話鳴ってる……ね」

 静止していた加賀見は、穂乃莉の声に盛大にため息をつくと、パタンとベッドに仰向けに倒れた。

 そしてのそのそとポケットから、鳴りやまないスマートフォンを取り出す。


「課長だ……」

 画面を覗いた加賀見は、スマートフォンをベッドに投げ出すと、ふてくされた声を出した。
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