清くて正しい社内恋愛のすすめ
「課長、こんな朝早くにどうしたんだろうね……」

 穂乃莉はゆっくりと身体を起き上がらせる。

 そして目に飛び込んできた乱れたシーツに、急激に恥ずかしさを込み上げながら、照れたように髪を耳にかけた。


「俺がメッセージ送ったからだろうな……」

 加賀見はため息をつきながらつぶやくと、投げ出したスマートフォンを手に取る。

 そして画面をタップしようとした瞬間、それを見計らったかのように、ぷつりと着信音が止まった。


「これ、タイミング狙ってただろ……」

 加賀見が再びふてくされた声を出し、穂乃莉は思わずぷっと吹き出した。

 そんな穂乃莉を見て、加賀見も吹き出しながら身体を起こす。

 加賀見はベッドの上で胡坐をかくと、そっと手を広げた。


「おいで」

 加賀見の姿に、穂乃莉は一瞬目を丸くする。

 朝日を背に受けてほほ笑む加賀見は、もはや王子様にしか見えない。


 穂乃莉はドキドキと鳴り響き出した鼓動の速さを感じながら、加賀見の胸に飛びこんだ。

 穂乃莉をギュッと抱きしめる加賀見から伝わる音も、同じように速いリズムを刻んでいる。
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