清くて正しい社内恋愛のすすめ
 会議室では、穂乃莉から事の一部始終を聞いたメンバーの、息をのんだような静寂だけが流れている。

 声を出した玲子と、驚いた表情のまま固まっている花音と卓。

 そして詳細な事実を知った相田は、静かに目を閉じると、苦しそうに小さく息を吐いた。


「みんなで一緒に作り上げたプランだったのに、こんな結果になってしまってごめんなさい」

 穂乃莉は小さく頭を下げる。

「穂乃莉さんは何も悪くないじゃないですか! 謝るのは東雲の方ですよ!」

 卓が珍しく声を荒げ、悔しそうに机に拳を叩きつけた。

「東雲が、そんなホテルだったなんて……そんなの、辞退して当然です!」

 花音が今にも泣き出しそうに顔を歪める。

 みんなが同じように怒ってくれたことで、穂乃莉は少しだけ心が軽くなった。


「当然、東雲の本社には訴えるんだよね?」

 玲子が怒りを抑え込んだような顔で声を出す。

 穂乃莉は隣に座る加賀見と目線を合わせた後、小さく首を振った。


「なんで!?」

 玲子は勢いよく立ち上がると、机をドンっと両手で叩いた。
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