清くて正しい社内恋愛のすすめ
「加賀見、お願い……。一緒にいられる時間を、守りたいの……」

 穂乃莉は震えながら、加賀見の胸にすがりついた。

 加賀見はしばらく、何も言わずに穂乃莉を優しく抱きしめる。


「……わかった」

 加賀見の低い声が聞こえ、穂乃莉はそっと顔を上げた。

「俺も、穂乃莉と過ごす時間を、失いたくない」

「加賀見……ありがとう」

 そのまま二人はお互いの温度を確かめるように、優しく抱きしめ合ったのだ。


 会議室にシーンとした空気が流れ、相田が口を開こうとした時、それまで黙っていた花音がおもむろに声を出した。

「私は、穂乃莉さんが訴えないと決めたなら、それでいいと思います……」

「花音ちゃん、何言ってるの!?」

 玲子がくわっと顔を上げ、花音を睨みつける。

 花音は穂乃莉と加賀見にそっと目線を送ると、玲子を振り返った。


「穂乃莉さんに、まだトラベルで働いて欲しいからです……。訴えるのは、今すぐじゃなくてもいいと思うんです」

「花音ちゃん……?」

 花音の言葉を聞いて、穂乃莉ははっと顔を上げる。
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