清くて正しい社内恋愛のすすめ
「花音ちゃん、ちょっとだけいいかな」

 会議が終わり、机の片づけをしていた穂乃莉は、手を止めると花音を小さく呼び止めた。

 もう加賀見たちは会議室を出て、一足先にフロアに戻っている。

 穂乃莉は花音の言葉に、どうしても一言お礼が言いたかったのだ。


「さっきはありがとうね」

 穂乃莉が声を出すと、花音は不思議そうに首を傾げた。

「私に、まだトラベルで働いて欲しいって言ってくれたこと……すごく、嬉しかったの」

 穂乃莉はそう言いながら、再び瞳をうるうるとさせた。

「なぁんだ、そのことですかぁ? もう、穂乃莉さんったらぁ」

 花音は嬉しそうにニコニコとほほ笑みながら、穂乃莉に近づくとそっと手を取る。

 花音に手を引かれながら、穂乃莉は近くにあった椅子に腰かけた。


「私、正直びっくりしたんですよぉ」

 花音は伸びをするように手を伸ばすと、くすりと肩を揺らす。

「びっくり……?」

 穂乃莉は、なんのことかわからず、小さく首を傾げた。
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