清くて正しい社内恋愛のすすめ
「加賀見さんがいたから、穂乃莉さんは今回の件も、乗り越えられたんだろうなって。私はただ、そんなお二人が一緒に仕事する姿を、もっと見ていたいなって思っただけです!」

 花音はそう言うと、おどけたように肩をすくめる。


 穂乃莉は、花音が自分たちをそんな風に見ていたなんて、全く思いも寄らなかった。

 でも花音の言う通りだと思う。

 出張に行く前の穂乃莉と加賀見は、契約恋愛という言葉だけでつながった、ちぐはぐな関係だった。

 それは、穂乃莉がどれだけ加賀見に恋していても、変わらないような気がしていた。

 でも今は違う。

 穂乃莉も加賀見もお互いを想い、必要としていて、二人の時間を大切にしたいと思っている。


 ――加賀見がいて、必死に支えてくれたから、私はこうやって前に進んで行ける。だから強くなれたんだ。


 花音の言葉を聞いて、穂乃莉は改めてそう思うことができた。


 穂乃莉は花音の顔を、まじまじと覗き込む。

 花音は恋愛ごとに敏感なだけでなく、人の心の動きを繊細に感じて、思いやれる女性なのだろう。
< 169 / 445 >

この作品をシェア

pagetop