清くて正しい社内恋愛のすすめ

突然の来訪

「みんな、いつも以上にはしゃいでたね」

 穂乃莉は少し前を歩く、玲子や花音たちの後ろ姿を見ながら、隣の加賀見に声をかける。

 加賀見は小さくほほ笑むと、「そうだな」と口元を引き上げた。


 みんなが涙した会議の後、打ち上げと称して国内チームはいつものごとく飲み屋になだれ込んだ。

 ハイテンションで場を仕切る玲子に笑い声を立てながら、穂乃莉はひとりひとりにそっと目をやる。

 東雲の一件を経て、みんなの気持ちがまた一つになれたこと、その中に自分も仲間としていられることが、とても嬉しかった。


 飲み屋でのみんなの姿を思い出し、くすりと肩を揺らしながらも、穂乃莉に急激に眠気が襲ってくる。

 たとえ心は満たされていたとしても、ここ数日での出来事に、さすがに穂乃莉の身体も悲鳴を上げているようだ。

 口元に手を当てて小さく欠伸をした穂乃莉を、加賀見が横から覗き込んだ。


「昨日の今日だし、穂乃莉も疲れただろ?」

「うーん、ちょっとね。でも、それは加賀見だって一緒でしょう? 出張先でもちゃんと寝られなかったし……」

 そこまで言った穂乃莉は、ホテルで加賀見と甘く抱き合った姿を思い出し、ぼっと頬を赤らめる。
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