清くて正しい社内恋愛のすすめ
 週も明けた夕方、穂乃莉は休憩スペースの自動販売機でミルクティーのボタンを押すと、そっとスマートフォンを開いた。

 画面には“大人におススメの、デートスポット特集♡”という、むず痒いような文字が並んでいる。

 穂乃莉は可愛らしい文字で書かれた記事を目で追った。


 『行きたいとこ、考えといて』


 加賀見に耳元でささやかれてからここ数日、穂乃莉は時間があればスマートフォンを覗いている。

 しばらく恋愛から遠ざかっていたのもあるが、いざデートとなると、どこに行くものなのだろうかと悩んでしまう。

 ついつい頭に浮かぶのは、遊園地や映画館などの定番のデートスポットだ。

 花音にアドバイスを求めれば、必要以上の量の情報をくれそうな気もするが、恥ずかしくて言い出せなかった。


 ――やっぱり、ここかなぁ。


 穂乃莉はあるページで手を止める。

 加賀見との初めてのデートなのだから、少しはロマンチックなところに行きたい。

 穂乃莉はそんな想像をした自分に、かっと頬をピンクに染めると、慌ててミルクティーの缶を掴みフロアに戻った。
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