清くて正しい社内恋愛のすすめ
「今日、正式に久留島社長から電話があったよ。君がいなくなるのは、うちにとっては大きな痛手だね」

 穂乃莉が社長室に入ると、社長の大島が嘆くように眉を下げた。

 社長室には課長の相田も呼ばれていたようで、すでに応接セットのソファに座っている。


「大島社長には本当にお世話になってばかりで。もっとお役に立ちたかったのですが……」

 穂乃莉は社長に勧められるまま、相田の隣に浅く腰かけた。

「いやいや。君は十分働いてくれたよ。ここでの経験を生かして、本社でも十分に力を発揮することだろうよ」

 社長は満足そうにほほ笑むと、穂乃莉の向かいに腰を下す。

 するとおもむろに隣の相田が穂乃莉に目を向けた。


「穂乃莉。社長とも話し合ったんだが、お前が以前からずっと営業をかけている“東雲リゾートホテル”の件。あれをトラベルでの最後の仕事として、お前にお願いしたい」

 相田の声に穂乃莉はぐっと背筋を正すと、深くうなずいた。
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