清くて正しい社内恋愛のすすめ
動き出した車の中で、東雲はふっと頬を緩めると、くくっと楽しそうに肩を揺らす。
バックミラー越しに映ったその顔に、秘書の斎藤は目を丸くして驚くと、まじまじと覗き込んだ。
「珍しいですね。社長がそんな顔をされるなんて……」
「そうか?」
「えぇ、そうですよ。いつも難しい顔をされてます。謝罪に行かれたことが、よほど楽しかったんですね」
斎藤の皮肉めいた口ぶりにも、東雲は小さく口元を引き上げると「まあね」と声を出した。
斎藤は東雲が唯一、心を許せる部下だ。
若くして父の跡を継ぎ社長になった東雲には、社内外問わず敵が多い。
だからこそ、穂乃莉が仲間との時間を大切にしていると語ったことが、不思議でならなかったのだ。
ふと窓の外に目をやると、目の前を早いスピードでネオンの光の筋がいくつも通り過ぎる。
東雲はその光の中に、目を逸らせない程引き込まれた、穂乃莉の横顔を思い浮かべた。
「久留島穂乃莉か……」
東雲は小さくつぶやくと、スマートフォンを取り出す。
そしてアドレス帳をスクロールさせると、一件のメールアドレスを見つけ出した。
東雲は慣れた手つきでメッセージを打ち込み、送信の画面をタップすると、再び思いふけるように窓の外に目をやった。
バックミラー越しに映ったその顔に、秘書の斎藤は目を丸くして驚くと、まじまじと覗き込んだ。
「珍しいですね。社長がそんな顔をされるなんて……」
「そうか?」
「えぇ、そうですよ。いつも難しい顔をされてます。謝罪に行かれたことが、よほど楽しかったんですね」
斎藤の皮肉めいた口ぶりにも、東雲は小さく口元を引き上げると「まあね」と声を出した。
斎藤は東雲が唯一、心を許せる部下だ。
若くして父の跡を継ぎ社長になった東雲には、社内外問わず敵が多い。
だからこそ、穂乃莉が仲間との時間を大切にしていると語ったことが、不思議でならなかったのだ。
ふと窓の外に目をやると、目の前を早いスピードでネオンの光の筋がいくつも通り過ぎる。
東雲はその光の中に、目を逸らせない程引き込まれた、穂乃莉の横顔を思い浮かべた。
「久留島穂乃莉か……」
東雲は小さくつぶやくと、スマートフォンを取り出す。
そしてアドレス帳をスクロールさせると、一件のメールアドレスを見つけ出した。
東雲は慣れた手つきでメッセージを打ち込み、送信の画面をタップすると、再び思いふけるように窓の外に目をやった。