清くて正しい社内恋愛のすすめ
 穂乃莉はみんなの顔をぐるりと見回すと、先ほどまでの内容を、順を追って説明した。

 東雲社長が謝罪したこと、支配人は退職しホテルは新たな支配人の元で再出発することになったこと。

 そして、企画のこと……。


 穂乃莉の話を聞きながら、みんなの顔つきが次第に、驚きと興奮が入り混じった表情に変わっていく。

「……え? ちょっと、待って。それってつまり……」

 玲子が確認するように片手を上げる。

「穂乃莉さんの企画が、通ったってことですよね!?」

 卓が叫び、花音が声にならない悲鳴を上げた。


 みんなの様子に穂乃莉がうなずこうとした瞬間、穂乃莉の身体がふわりと宙に浮く。

「え?」

 何が起こったのか思考が追い付く前に、加賀見に抱き上げられた穂乃莉は、そのままギュッと力いっぱい抱きしめられた。


「きゃー♡」

 花音のひと際高い悲鳴に、他の部署の社員も何事かと集まってくる。

「か、加賀見……。みんな見てるから……」

 穂乃莉が顔を真っ赤にすると、加賀見はかすかに潤んだ瞳を穂乃莉に向けた。


「わかってる。今日だけは、特別だ。見せつけとけ……」

 加賀見の低い声が耳元で響き、穂乃莉はくすりと笑ってうなずくと、愛しい加賀見の首元に顔をうずめるように抱きついた。
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