清くて正しい社内恋愛のすすめ

星空のキス

「じゃあ、お先に」

 加賀見がみんなに片手を上げ、穂乃莉もそれに続くように声を出す。

 二人はみんなの笑顔に見送られながら、フロアを後にした。


 さっきまでの興奮が尾を引き、頬はまだ火照ったように熱い。

 会社のエントランスから一歩外に出た途端、真冬の冷たい風にさらされたが、逆にそれが心地良かった。


 企画が通った喜びから、みんなの面前で抱き合ってしまった二人と、それをはやし立てるお祭り騒ぎは、その後何も知らずにフロアに戻ってきた相田にバッチリ目撃されて終了した。

「もしかして、またタイミグ悪かったか?」

 そそくさと席に戻る他部署の社員たちを横目に、相田が加賀見にひそひそと耳打ちし、加賀見は吹き出して笑っていたが、穂乃莉には何のことかさっぱりわからなかった。


 加賀見と笑い合う相田の顔を見ながら、穂乃莉は心のどこかでほっとする。

 相田自身は口には出さなかったが『穂乃莉が支配人に、連れ出されたきっかけを作ってしまったのは自分だ』と、相田が責任を感じているらしいと、加賀見から聞いていたのだ。
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