清くて正しい社内恋愛のすすめ
「お前、それ反則……。そんな顔で言われたら、キスしたくなる……」

 加賀見の唇が耳元でかすかに動き、そのままスーッと穂乃莉の唇に落ちる。

 まるで流れ星が落ちたような小さなキスは、じわじわと穂乃莉の身体を熱くした。


 穂乃莉が潤んだ瞳を上げると、加賀見も穂乃莉の瞳を深く覗き込む。

 二人は視線を絡ませると、お互いの熱を確認するように、もう一度そっと唇を重ねた。


 ――加賀見のキスは、やっぱり魔法だ……。


 穂乃莉がぽーっとなった頭でそんな事を思った時、咳払いをしながらサラリーマンが隣を通り過ぎる。

 二人ははっとして我に返ると、慌てて身体を離し、顔を見合わせて笑った。


「それにしても、穂乃莉が星を好きだったとは知らなかったな」

 再び歩き出した二人は、イルミネーションで飾られた通りに出る。

 歩道に植えられた街路樹には、キラキラと無数の小さな光が輝いていた。

 そのほんのり黄色くて淡い光に包まれるように、加賀見と手を繋いでゆっくりと足を進める。
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