清くて正しい社内恋愛のすすめ
「あのね、私の実家、久留島の本店に中庭があるんだけど、そこの天井がガラス張りになっててね。晴れた日の夜には、満天の星空が見えるの」

「へぇ、そんな場所があるんだ?」

「そう。私だけが知ってる特別な場所なの。本当は、中庭は立ち入り禁止だからね」

 穂乃莉はくすりと肩をすくめる。

 加賀見は優しくほほ笑みながら、穂乃莉の話を聞いていた。


「私ね、子供の頃からよく一人でこっそり見に行ってたの。星を眺めていると、母のいない寂しさも紛らわせた……。それに自分の悩みなんてちっぽけだな、なんて思えたりしてね。すごいよね。ただそこで輝いているだけなのに……」

「それで星が好きになったんだ?」

「うん。だから本当は、加賀見と一緒にその中庭に行きたかったんだけど、ちょっと遠いからね。今回はプラネタリウムで……」

「カップルシートだろ?」

 穂乃莉の言葉にかぶせるように、加賀見はにやりとした顔つきで声を出す。

 やはり腹黒王子は健在だ。


「も、もう! その言い方、なんかいじわる!」

「そうか?」

「そう!」

 穂乃莉は真っ赤な頬をぱんぱんに膨らませると、子供の様にぷいっとそっぽを向く。
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