清くて正しい社内恋愛のすすめ
「近隣のバス会社に対応できないか確認中だけど、今のところあんな感じ」

 加賀見がホワイトボードを指さし、穂乃莉は顔を向けた。

 ホワイトボードには連絡をとったであろう、バス会社の名前がぎっしりと書かれている。


 やはりどこの会社も直近の予定は全て埋まっているのだろう。

 そのほとんどに、バツ印がついていた。

 穂乃莉は壁の時計に目をやる。

 もう定時の時間も近い。

 週末の夕方ともなれば、営業を終了する会社も出てきてしまう。

 早めに見つけないと、ツアー自体が中止になる可能性も出てくるだろう。


「穂乃莉さーん」

 すると電話を終えたらしい卓が、半分泣きべそをかくように声を出した。

「加賀見さんにまで手伝ってもらっちゃって、本当にすみません……」

 シュンとして、ひどく落ち込みながら頭を下げる卓に、穂乃莉は小さく首を振る。


「おい、卓。反省するのは、全部片付いてからにしろ!」

「は、はい!」

 加賀見に渇を入れられて、卓は鼻をすすると、また電話に手をかけた。
< 206 / 445 >

この作品をシェア

pagetop