清くて正しい社内恋愛のすすめ
 穂乃莉は小さくため息をつくと、加賀見と顔を見合わせる。

「ちょっといいか?」

 すると加賀見が廊下を指さし、穂乃莉はうなずくと外へと出た。


「大変そうだね。何か手伝えることある?」

「今、玲子さんと宮原に、俺の抱えてる仕事のサポートはしてもらってる。穂乃莉は、バス会社が見つかった時のために、契約関係の書類の準備をお願いできるか?」

「うん。わかった」

 大きくうなずいた穂乃莉の顔を、加賀見が眉を下げながらじっと覗き込む。


「加賀見?」

 穂乃莉も首を傾げながら、じっと覗き込む。

 するとしばらくして、加賀見は心底深いため息をつくと、穂乃莉の肩にトスッと頭を乗せた。


「……この件で、明日は休日出勤になりそうなんだよな」

 加賀見の珍しく落ち込んだような声に、「そりゃそうだよね」と思いつつも、穂乃莉も深くため息をついてしまう。

 穂乃莉だって同じチームなのだから、今の状況はわかっている。

 それでも加賀見が休日出勤になれば、当然デートの予定はキャンセルだ。
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