清くて正しい社内恋愛のすすめ
「そういえば、昨夜は帰り平気だったか?」

 人気(ひとけ)のない廊下に相田の声が響き、穂乃莉は途端にギクリとする。

「だ、大丈夫でした……」

 穂乃莉は無理やり平静を装うように声を出す。

 気を抜くとつい、赤面してしまいそうだ。


「もしかして、陵介に送ってもらったか?」

 相田がからかうように顔を覗き込ませた。

「お、送ってもらってませんから! それより、課長たちは平気だったんですか?」

 怒ったように頬を膨らませた穂乃莉に、相田はくすりと肩を揺らす。

「あぁ。予想以上に、石崎と花音が酔っててさ、卓と二人で無理やりタクシーに詰め込んだよ」

「玲子さん、昨日はやけにピッチ早かったですもんね」

「まぁたぶん、お前の退職の話を聞いた後だから、ってものもあるだろうな。あいつは穂乃莉のこと、可愛がってたからな」

「そうですね……。本当によくしてもらいました」

 穂乃莉はそう答えながら小さくため息をつく。


 玲子は相田と同期で、穂乃莉が入社した時から指導係として色々と教えてくれた先輩だ。
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