清くて正しい社内恋愛のすすめ
 夕方になり、穂乃莉は祖母に言われた通り、マンションのロビー前で迎えを待っていた。

 普段はしないアップスタイルの髪型にしたためか、首元がすーすーとしている。

 祖母には「おしゃれするように」と言われたが、どんな相手が来るのかもわからない。

 服装は無難に、レース生地の紺色のワンピースを着ていくことにした。


 しばらくすると、玄関前に一台の黒塗りの車が横づけされる。

 中から出てきた運転手が「お待たせしました」と(うやうや)しく頭を下げると、穂乃莉を後部座席に案内した。


 車はゆっくりと発進し、到着した先は有名ホテルのレストランだった。

 地上30階のホテルの最上階に位置するレストランは、窓から都会の夜景が一望できる。

 冬の澄んだ空気の中では、この都会の夜景もキラキラと輝いて見えた。


 穂乃莉は、一旦その景色に足を止めてから、案内された窓際の席につく。

 それにしても、いくら接待とはいえ、こんな所で初めての人と何を話せというのだろう。


 ――おばあさまったら、一体何を考えているの……。


 小さく息をついた穂乃莉は、しばらくして入り口からこちらへ案内されてくる、背の高い人物を見て思わずえっと目を丸くする。
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