清くて正しい社内恋愛のすすめ
「僕が臆病だからかな?」

「臆病?」

「あなたに断られたら、立ち直れないかも知れないでしょう?」

「そんな! 東雲さん程の人が、何をおっしゃってるんですか!?」

 穂乃莉が思わず身を乗り出すと、東雲はあははと声を上げてからにっこりとほほ笑む。


「やっと顔を上げてくれた」

「え……?」

「正直に言います。僕は純粋に、あなたに興味がある。だから久留島社長に、そのまま伝えました」

 東雲のまっすぐな瞳に、穂乃莉は再びドギマギすると下を向いた。


 ――興味って……? おばあさまは全部知っていて、私にここへ来るように言ったってこと?


 戸惑う穂乃莉の横で、ソムリエが慣れた手つきで、グラスにロゼのスパークリングワインを注ぐ。

 まるでピンクのバラの花が開いたように、急にテーブルが華やかになり、穂乃莉は一瞬目を奪われた。


「まずは乾杯しましょう」

 東雲が静かに声を出し、穂乃莉は促されるまま、そっとグラスに口をつける。

 フルーティな香りと甘酸っぱさが口に広がり、思わず頬がほころんだ。
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