清くて正しい社内恋愛のすすめ
「だから、いつか東雲さんにも、あなたの心を癒してくれる人が現れることを願っています」

 穂乃莉は顔を上げ、まっすぐに自分の気持ちを伝えるように丁寧に言葉を繋ぐ。

 東雲には、変に取り繕ったりせず、きちんと自分の想いを伝えるべきだと思ったのだ。


 ――それが、まっすぐと私に気持ちを伝えてくれた、東雲さんへの誠意だ。


 東雲は穂乃莉をじっと見つめた後、寂しそうにふっと息を吐くと小さくほほ笑んだ。


「それはあなたではない、ということですね」

「東雲さん……」

 それからしばらく、二人は静かに食事を進めた。


 コース料理も終わりに近づいたころ、東雲は最初のような穏やかな笑顔を穂乃莉に向ける。

「穂乃莉さんの心の中にいる彼とは、もう将来を約束されているのですか?」

 東雲の言葉を聞いた途端、穂乃莉は小さく瞳を動かすと、動揺したように下を向く。


 ――加賀見との、将来……。


 それはまさに今、加賀見との関係を終わらせたくない穂乃莉が、一番聞きたいと思っていること。
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