清くて正しい社内恋愛のすすめ
 穂乃莉の気持ちは、もう止められない所まできている。

 でも正直に加賀見のことを話したとして、契約恋愛として始まったこの関係を、祖母がそう簡単に納得して認めてくれるとは思えなかった。


 ――それに……加賀見がどう思っているのかもわからない……。


 加賀見は本当に、穂乃莉の退職とともに、この恋愛を終わりにしようと思っているのだろうか。

 あんなに加賀見の熱を感じるのに、虫よけの契約恋愛だと割り切れているのだろうか。


 穂乃莉は顔を上げると、バッグチャームが置いてある棚に目をやる。


 ――やっぱり、加賀見に気持ちを伝えなきゃいけない。そして、私は終わらせたくないって伝えるんだ。東雲さんが、私と向き合って想いを伝えてくれたように……。


 その日の日付が変わるころ、穂乃莉のスマートフォンに加賀見からメッセージが届いた。

 いつになく淡々としたメッセージには、バス会社は無事に見つかり、ツアーは問題なく催行できることが書いてあった。

 そして最後に「この先、代休と出張があるから、東雲へのプラン説明の日までは会えない」と付け加えられていた。
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