清くて正しい社内恋愛のすすめ

　加賀見は出張に向かう新幹線の中で、頭に手を当てると髪の毛をくしゃりと掴んだ。

　ここ数日、何度もあの夜の光景が脳内で繰り返されている。

　別に嫉妬とかそういった類ではないと思う。

　ただ加賀見の心に、ずしりと重いものを落として行ったのは事実だ。


「もう、本当にご迷惑をおかけしましたー！！」

　ネオンが光る大通りに卓の声が響き渡る。

　加賀見は相田と顔を見合わせると、声を上げて笑った。


　週明けのツアーで乗車するバスが手配できていないと聞いた時は、さすがの加賀見も顔が青ざめたが、何とか引き受けてくれるバス会社を見つけることができた。

　ついさっき全ての関係者への情報共有を済ませ、穂乃莉が用意してくれた書類をバイク便に預けた所だ。


「もう、今日は僕の奢りですので！　なんでもジャンジャン頼んじゃってください！」

　心底ほっとした後だからか、異常にテンションの高い卓が自分の胸をドーンと叩く。

「本当に何でもいいのか？」

「もちろんです！」