清くて正しい社内恋愛のすすめ

それぞれの再会

　穂乃莉は案内された会議室の椅子に腰を下ろすと、そっと隣の加賀見を見上げた。

　今日は東雲の本社へ、プランの説明に来ている。

　加賀見の顔を見るのは数日ぶりだ。


　久しぶりに会社で顔を合わせてから、加賀見の様子はいつも通りに感じるが、休日出勤の夜に加賀見から来たメッセージが、どことなくよそよそしかったことが穂乃莉はずっと引っかかっている。

　そして突然の誘いだったとは言え、東雲とプライベートで会ったことを、加賀見に話せていないことも気になっていた。


「加賀見、あのね……」

　穂乃莉が小さく口を開いた時、会議室の扉をノックする音が聞こえる。

　カチャリと扉が開き、中に入ってきた人物を見て、穂乃莉は「あっ」と声を上げた。


「お久しぶりです」

　そう言いながら、中に入って来たのは吉村だ。

「吉村さん！」

　穂乃莉は加賀見と顔を見合わせると、立ち上がって吉村の側に駆け寄った。

　すると吉村は、突然腰を曲げ深々と頭を下げる。
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