清くて正しい社内恋愛のすすめ
「加賀見の休日出勤の日、急におばあさまから連絡が来たの。自分の代わりに接待に行って欲しいって」

「接待?」

「そう。相手の名前も聞かされず、行った先で現れたのは東雲さんだった……」

「どういうことだ……?」

 加賀見は首を傾げている。


「どうも東雲さんが、おばあさまにお願いしたらしいの。私と食事に行きたいって……」

「つまり、東雲社長はお前のことを気に入ったってことか?」

 加賀見が背もたれに寄りかかりながらため息をつき、穂乃莉は小さくうなずいた。

 穂乃莉の脳裏に、あの日の東雲のまっすぐな瞳が浮かぶ。


「でも、私はその気持ちを断ったの」

「え……?」

 穂乃莉は顔を上げると、加賀見の瞳を見つめた。

 心臓はドキドキとその動きを加速させる。


「ねぇ、加賀見。加賀見はどう思ってるの? 私との恋愛は、本当にただの虫よけの契約恋愛なの……?」

「穂乃莉……」

「三ヶ月が経って、私がトラベルを退職したら、それでこの恋愛は終わりなの……?」

 すがるように見上げる穂乃莉の顔をじっと見つめながら、加賀見がテーブルの上に置いた穂乃莉の手にそっと自分の手を重ねた。
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