清くて正しい社内恋愛のすすめ
動き出した影
「加賀見さーん。今日もよろしくお願いしまーす」
定時も近づいたころ、受付の女性社員たちのやたらと甲高い声が、国内ツアーチームの島に響き渡る。
「あぁ……。じゃあ会議室で」
加賀見が低い声を出し、資料を片手に立ち上がった。
その顔つきが乗り気でないことは、手に取るようにわかる。
穂乃莉が目線を送ると、加賀見は「ごめん」というジェスチャーを見せながらフロアを出て行った。
「何なんですかぁ!? あれ!」
花音が頬をぷっと膨らませながら、椅子のキャスターを響かせると、穂乃莉の隣にぐっと身体を寄せた。
「しょうがないよ。2週間集中で研修するんだって」
「それは聞きましたけどぉ! 完全に加賀見さんの、プライベートな時間を奪ってるじゃないですか! 何で課長も断らなかったのかなぁ!?」
花音は大袈裟に腕を組むと、今は席を外している相田のデスクを睨みつけた。
受付を管理している総務部長から、加賀見に社内研修をして欲しいと依頼があったのは数日前だ。
来訪者を一番先に出迎える受付は“会社の顔”という総務部長の考えの元、定期的に各部署に社内研修を依頼しているらしい。
定時も近づいたころ、受付の女性社員たちのやたらと甲高い声が、国内ツアーチームの島に響き渡る。
「あぁ……。じゃあ会議室で」
加賀見が低い声を出し、資料を片手に立ち上がった。
その顔つきが乗り気でないことは、手に取るようにわかる。
穂乃莉が目線を送ると、加賀見は「ごめん」というジェスチャーを見せながらフロアを出て行った。
「何なんですかぁ!? あれ!」
花音が頬をぷっと膨らませながら、椅子のキャスターを響かせると、穂乃莉の隣にぐっと身体を寄せた。
「しょうがないよ。2週間集中で研修するんだって」
「それは聞きましたけどぉ! 完全に加賀見さんの、プライベートな時間を奪ってるじゃないですか! 何で課長も断らなかったのかなぁ!?」
花音は大袈裟に腕を組むと、今は席を外している相田のデスクを睨みつけた。
受付を管理している総務部長から、加賀見に社内研修をして欲しいと依頼があったのは数日前だ。
来訪者を一番先に出迎える受付は“会社の顔”という総務部長の考えの元、定期的に各部署に社内研修を依頼しているらしい。