清くて正しい社内恋愛のすすめ
「随分と評価が高いのですね」

「当たり前ですよ。入社した時から目をつけてたんですから！　だから困るんです。お嬢様に出て来られると」

　白戸は憎々しそうにそう言うと、灰皿に手を伸ばしジュっと音をたてて煙草の火を消した。

　小さな煙がゆらゆらと上っていく。

　その様をぼんやりと眺めていた白戸は、急にパッと顔を上げた。


「でも東雲社長だったら、久留島社長にお願いして、簡単に久留島さんを自分のものにできるんじゃないですか？　早く奪っちゃってくださいよ」

　白戸は、あははと声を上げる。

「そうですね。僕も最初はそう思いました。でもそれはあくまで、穂乃莉さんに相手がいない場合の話です。久留島社長は結局、可愛い孫の幸せを優先する方でしょう。穂乃莉さんが、他にいい人がいると訴えれば、無理強いはしないと思います」

「そういうもんですかねぇ」

　不満げに口を尖らせる白戸の顔を、東雲がチラッと横目で見た。


「ところで、先ほど言っていた『あと少し待てば』というのは？」

　白戸は「うーん」と言いながら、じらすようにテーブルに置かれたワイングラスに口をつける。
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