清くて正しい社内恋愛のすすめ
 東雲は小さくため息をつくと、柔らかい顔を白戸に向けた。

「わかりました。今後、ここは自由に使って頂いて構いません。もちろん、支払いは僕が持ちましょう」

「本当ですか!? やっぱり東雲グループの社長は違いますね」

 白戸は飛び上がるように喜ぶと、目の前の食事に手をつける。


「それで?」

「実はあの二人……“契約恋愛”してるんですよ」

「契約恋愛?」

「久留島さんの退職までって約束みたいです」

「どういうことですか?」

「久留島さんって、元々加賀見さんのこと全く意識してなかったんですよ。というか、恋愛しないように、周りと壁を作ってた所があって。久留島グループの跡継ぎだし、いずれは実家に戻るっていうのがあったからでしょうね」

 東雲が静かにうなずき、白戸はその様子を見て、楽しそうに人差し指をぴんと立てた。

「それがどういうわけか、加賀見さんと契約恋愛を始めてしまった。そしてどうも本気になっちゃった。それなのに、まだ加賀見さんに自分の気持ちを言えてないんですよ。ピュアすぎて、笑っちゃうでしょう?」
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