清くて正しい社内恋愛のすすめ
 加賀見が、怒ったプンプンポーズの花音を真似るから、穂乃莉は可笑しくなってぷっと吹き出した。

「もう! そこまでは言われてないから」

「やっぱり怒られたんだな」

「そ……それは、そうなんだけど」

 加賀見は手に持っていた荷物を近くのデスクに置くと、穂乃莉の肩を抱き寄せながら紙袋を覗き込む。


「見せて。穂乃莉のチョコを一番先に食べたい」

「うん……」

 穂乃莉は頬をピンクに染めながら、そっと紙袋から小さな箱を取り出した。

 こげ茶色にゴールドの縁取りがしてある箱は、光沢のある赤茶色のリボンが掛けられている。


「あっちで開けようか」

 加賀見は箱を受取ると、窓際の方へと歩いて行った。

 目の前のライトアップされたケヤキ並木が見下ろせる窓際は、真っ暗な夜空に対して明るい社内の蛍光灯がガラスに反射して、ぼんやりと二人の姿を映し出す。

 加賀見と並んで窓際のデスクに寄りかかる自分の姿に、穂乃莉はどことなく気恥ずかしくて照れてしまう。


「社内だよ。いいの?」

 照れ隠しに小さく言った穂乃莉を抱き寄せると、「いいんだよ」と加賀見が耳元でささやいた。
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