清くて正しい社内恋愛のすすめ
「もう、ばか……」

 加賀見が楽しそうにあははと声を上げ、穂乃莉も一緒にくすくすと笑い声を上げた。


 二人で肩を寄せ合いながら、静かに窓の外を眺める。

 ガラスに映る加賀見の顔は、穂乃莉の心の中と同じように満ち足りている。

 今だったら、この前の続きを伝えられるかも知れない。


 穂乃莉は加賀見に向き直ると、背すじをぴんと伸ばして顔を上げた。

「あのね、この前言いかけたことなんだけど……」

 するとその言葉を制止するように、加賀見がそっと穂乃莉の唇に人差し指を当てる。

 穂乃莉は戸惑って小さく首を傾げた。


「そのことなんだけど、リベンジさせてくれない? プラネタリウム」

「え?」

「その時に、俺も穂乃莉に伝えたい事があるから……」

 さっきまでの顔つきとは違う、真剣な加賀見の瞳。

 穂乃莉はその深い瞳の色から目が離せなくなった。


 ――加賀見が、伝えたいこと……。


 期待と不安が入り混じったように、ドキドキと鼓動は次第に早くなる。


「うん」

 ゆっくりとうなずいた穂乃莉を抱き寄せると、加賀見は再び優しいキスをした。

 何度も唇を重ねる二人の姿は、イルミネーションの光とともに、ガラスの中で幸せそうに輝いて見えた。
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