清くて正しい社内恋愛のすすめ
 ランチが終わりデスクに戻ってきた穂乃莉は、リストを手に持つ玲子に声をかけられた。

「穂乃莉ちゃんの送別会なんだけどさ、いつも忘年会をやってる、社長の知り合いのお店にしようかと思ってるんだけど、どうかな?」

「えぇー、もう送別会の話ですかぁ? やめましょうよぉ」

 花音が眉を下げながら、穂乃莉の腕をギュッと掴む。


「いや、私だってヤなんだけどさ。今回は社長も参加するって言ってるし、課長も他部署にも声かけてって言うから、ちょっと早めに動かないといけなくて」

 玲子は困ったように頭をかいている。

「わざわざありがとうございます。私はどこでも大丈夫ですよ」

 穂乃莉はそう答えながらも、いよいよ退職が目の前に迫ってきた感がして、心はズキズキとしていた。


「幹事は私と卓でやるから。あ、あと、加賀見くんもちょっと手伝って欲しいんだよね」

 玲子はそう言うと、キーボードを叩いている加賀見を振り返る。

 加賀見は小さく眉を上げると、「了解です」と返事をした。

「穂乃莉ちゃんが好きだったメニューってさぁ……」

 玲子がリストを広げながら話し出した時、電話にでていた卓が穂乃莉に片手を上げるのが見える。
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