清くて正しい社内恋愛のすすめ
「本社の“東雲グループ”にはアプローチしてみた?」

「いえ。ホテルの運営は支配人に一任しているようで、本社に連絡しても『直接ホテルへ問い合わせるように』と言われるだけなんです……」

 玲子が「うーん」と腕を組みながら、うなり声を上げる。


 “東雲リゾートホテル”には、穂乃莉も何度となく足を運び、支配人との面会を申し入れてきた。

 しかし営業部が資料は受け取ってくれるものの、その後の支配人との面会までは進んだことがない。


「どんな企画を持って行ったんだ?」

 じっと黙っていた加賀見が口を開く。

「近隣三県の観光地を巡るツアーだよ。その最終日のSランクホテルに“東雲”を入れるっていうプラン」

「まぁ普通だな」

「ふ、普通って……」


 “東雲リゾートホテル”の周辺には、人気の観光スポットがいくつもある。

 他社も含め似たようなツアープランは乱立していて、顧客獲得のためには大きな差別化が必要だ。

 だからこそ穂乃莉は、今までツアー客を取らない“東雲リゾートホテル”への宿泊ができるプランを提案したかったのだ。
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