清くて正しい社内恋愛のすすめ
「でも……ずっと寂しい思いをしてきた、東雲さんの気持ちもわかるの。私も同じだったから……」

 穂乃莉がそう言うと、加賀見が「穂乃莉、待って」と言葉を遮るように声を出した。

「穂乃莉は人を思いやりすぎるんだ。穂乃莉自身はどうしたいんだよ」

「私……?」

 加賀見の言葉に、穂乃莉は瞳を小さく揺らす。


「俺も東雲社長との関係は、昨夜母親から聞いた。正直、俺も混乱したよ? でも俺にとっては、その事実を聞いたところで何も変わらない」

 加賀見はそう言うと、穂乃莉の頬にそっと手を当てる。

「穂乃莉は、俺が東雲に行きたいって言うとでも思ってたのか?」

「だって……お母さんの望みなんだよ……?」

「そりゃ、母親はそう思ってるかも知れないけど、俺はもう独立してるんだよ。自分の人生は自分で決める。俺はお前を守るって言っただろ?」

「でも……」

 うつむこうとする穂乃莉の顔を、加賀見が優しく持ち上げた。


「穂乃莉、お前はどうしたい?」

 加賀見に瞳の奥を見つめられ、穂乃莉は時が止まったようにその瞳を見入る。
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