清くて正しい社内恋愛のすすめ
「えっと……あの」

 穂乃莉はすとんとベンチに腰を下ろすと、キョトンとしたまま加賀見の顔をじっと見つめた。


 ――加賀見は私のこと……好き……だったってこと……?


 穂乃莉に、穴が開きそうなほどまじまじと横顔を見つめられ、加賀見の頬が次第にピンクに色に染まっていく。


「あの……加賀見は、私のこと……」

 穂乃莉がドギマギしながら声を出すと、加賀見はそれを制止するように、穂乃莉の唇に人差し指を当てる。

 そして、ごそごそと脇に置いてた鞄から何かを取り出した。


「本当は、プラネタリウムに行ったときに渡そうと思ってたんだ」

 そう言いながら、加賀見が差し出したものを見た瞬間、穂乃莉ははっと息を止める。

「これ……って……」

 穂乃莉はかすれる声を必死に絞り出した。

 瞳には、今日何度目かの涙が今にも溢れ出しそうなほど、いっぱいに溜まっている。


「穂乃莉に受け取って欲しいんだ。今日は、それを伝えようと思ってた」

 加賀見はそう言うと、震える穂乃莉の手のひらに、そっと取り出したものを置く。
< 319 / 445 >

この作品をシェア

pagetop