清くて正しい社内恋愛のすすめ
 加賀見の熱を全身で感じながら、穂乃莉は背中に回した手にぎゅっと力を込める。

 まさか加賀見が、このバッグチャームを買っていたなんて、思いもよらなかった。

 そして、その意味を知っていたことも……。


「加賀見は、いつの間に買ってたの?」

 穂乃莉が下から覗き込むと、加賀見は少し照れたような顔をしながら肩を揺らす。

「会社から電話が入って外に出た時に、びわにゃんに声かけられて。その場では買えなかったからさ、穂乃莉との待ち合わせの前に走って買いに戻った」

 加賀見が必死に走る真似をして、穂乃莉はその様子を思い浮かべて、くすくすと笑い声をあげた。


「でもまさか、穂乃莉も買ってたとはな」

 加賀見が再び愛しそうに穂乃莉を見つめながら、優しく頬に触れる。

「私だってびっくりしたよ……」

 小さくそう答える穂乃莉の心は、加賀見への想いで今にも溢れそうだ。

「びわにゃん、いい仕事してるよ」

 加賀見の声に穂乃莉がぷっと吹き出すと、二人はほほ笑み合いながら、再びお互いをきつく抱きしめた。
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