清くて正しい社内恋愛のすすめ
「加賀見さんのスーツ、昨日と一緒です」

「え!?」

「それと髪のセットがいつもと違うような……。これはもしや、昨夜(ゆうべ)自分の部屋に帰ってない……」

「花音ちゃん!?」

 穂乃莉は慌てて花音の口に手を当てる。

 もごもごと暴れる花音と共に、穂乃莉たちはそのままエレベーターになだれ込んだ。

 社員で混み合うエレベーターの中でも、花音の鋭い指摘は止まらない。


「あ! なんですか!? お揃いのチャームまで!」

「もう、花音ちゃん! いいから黙って!」

 きゃあきゃあ騒ぐ二人を横目に、加賀見は楽しそうにくすりと肩を揺らす。

 そして扉が開いたと同時に「お先」と、片手を上げて颯爽と出て行ってしまった。


「やっぱり加賀見さんって、何事にもスマートですよねぇ。それに引きかえ、穂乃莉さんは……」

「な、なに……」

「本っ当に、ピュアですねぇ。まぁそこが穂乃莉さんの魅力なんですけどぉ♡」

「もう! 花音ちゃん!」

 ペロッと舌を出す花音を、穂乃莉が軽く睨みつける。

 そして二人は顔を見合わせるとぷっと吹き出し、くすくすと肩を寄せ合いながらデスクに向かった。
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