清くて正しい社内恋愛のすすめ
「確かに面白いかも知れないな」

 きゃぴきゃぴと騒ぐ花音を見ながら、相田が静かに声を出した。

 すると急に卓が、弾かれたように手を上げて立ち上がる。

「じゃあ、移動手段もランクアップさせるってどうですか? 今は、シートが完全個室になってる高級高速バスもあることですし!」

「なにそれぇ! すごい贅沢!」

「卓の案、採用!」

 明るい声に会議室内は急に活気づいてくる。

 いつの間にかホワイトボードは、みんなのアイディアで溢れかえっていた。


 ――あぁ、やっぱりいいな。


 穂乃莉は、生き生きと意見を出し合うみんなの顔を見ながら、ぼんやりと考える。

 あと三ヶ月でこの場から自分がいなくなることに、とてつもない寂しさが波のように押し寄せて来ていた。


 うつむいていた穂乃莉がふと視線を感じて顔を上げると、加賀見がそっと目を細めている。

 穂乃莉は加賀見の優しい視線に見守られ、安心すると力強くうなずき返した。


 ――寂しがったってしょうがない。あと三ヶ月、できる事をしよう。加賀見と一緒に……。


 穂乃莉は身を乗り出すと、またみんなの会話の輪に入っていった。
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