清くて正しい社内恋愛のすすめ
「このまま開発が進めば、久留島本店を含め周辺の温泉街は確実に衰退します。久留島本店の経営が悪化すれば、久留島グループ全体の経営に影響を及ぼすのは、火を見るよりも明らかです」

 加賀見はそこで一旦言葉を切ると、社長に顔を向ける。

「そこで社長の許可を得て、今後国内チームは抱えている全ての業務を一旦停止し、東雲グループへの対策に当てることとなりました。つきましては、他部署の皆様にも協力をお願いしたい」

 加賀見の声は会議室内にこだまするように響き渡り、全員の賛同の拍手の内に会議は終了した。


 その後具体的に、今現在国内チームが抱えている業務をどの部署に振り分けるか等の話し合いがなされたが、どの部署も協力的で、皆が久留島本店を守るために同じ方向を見てくれたことに、穂乃莉は涙が出る程嬉しかった。


 ――これも全部、加賀見のリーダーシップのおかげだ。


 そして穂乃莉は目じりの涙を押さえながら、加賀見と一緒にみんなに深く頭を下げたのだ。
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