清くて正しい社内恋愛のすすめ
「う、うん。夜は真っ暗になって、満天の星空が見えるんです。当然スパ施設が建てば、その光で星空がかすむ可能性はある。でも……どういうこと?」

 穂乃莉が大きく首を傾げながら見上げると、加賀見はホワイトボードに図を描き出す。


「スパ施設の建設が進む、イコール星空がかすむ、ってとこがポイントなんだ」

 まだ首を傾げるみんなの中で、相田が「あぁ」と小さくつぶやいた。

「星空を守るために“スパ施設建設反対”って声を、引き出したいわけだな」

 相田の声に玲子が納得したようにポンと手を叩き、加賀見は大きくうなずく。


「でもさ、スパ施設でかすむ星空は限定的じゃない?」

「いや、実際の所どれほど星が見えにくくなるかは、さほど重要じゃないんです。すべてはイメージ戦略です。相手が汚い手を使ってるんだから、こちらもしたたかに行く必要がある」

 その会話を聞きながら、穂乃莉は「でも……」と声を上げる。


「この星空ツアーをどこで開催するの?」

 穂乃莉は大きく首を傾げると、頭を巡らせる。

 星を見るために、加賀見はあの温泉街の、どこにお客様を連れて行こうと思っているのだろうか?
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