清くて正しい社内恋愛のすすめ
「それには、ぴったりの場所があるんだよ」

「ぴったりの場所?」

 穂乃莉は再び記憶を巡らせる。

 そして、はっと顔を上げた。

「もしかして……」

 本店で穂乃莉が星を見ていたのは、あそこしかない。

 加賀見は穂乃莉ににっこりと笑顔を向けた後、みんなをぐるりと見渡した。


「星空ツアーの開催場所は、久留島本店の中庭にします。そこはガラス張りの天井があって、季節を問わず星空が眺められる、いわば天然のプラネタリウムになるんです」

 加賀見の言葉に、みんなは驚いたような顔つきになる。


 ――本店の中庭で、星空ツアー……。


 それはまさしく幼き日の穂乃莉が、何度も星空を見上げて元気をもらっていた場所。

 確かに前に一度、加賀見に中庭の話をしたことはある。

 加賀見はその話を覚えていて、星空ツアーとして温泉街の目玉商品にしようと考えたというのか。


 ――そんな事、思いもつかなかった……。


 穂乃莉は身を乗り出すと、加賀見が説明するホワイトボードにくぎ付けになった。


「ツアーは温泉街一帯のすべての旅館を対象に、サービスにするのが良いと思います。毎晩温泉街を巡るツアーバスを出して、参加者を現地まで送迎する。それと会場にはガイドを常駐させて、実際の星空を見ながら季節に合わせた解説を挟みたい」
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